前回③の記事では、犬にとって
「炭水化物は必須栄養素ではない(=必要量は極めて少ない)」
という事実をご紹介しました。
それにも関わらず、市販の多くのドッグフードでは
炭水化物が原材料の40〜60%を占める
ものが主流です。
今回は、獣医師の視点から
「なぜ必要性が低いのにこれほど多く使われるのか?」
を、科学・経済・製造・流通の観点から分かりやすく解説します。
1|理由①:ドライフードを“固めるための接着剤”として必要だから
ドライフード(キブル)は、
「エクストルーダー」という機械でコーンフレークのように成形して作ります。
このときに欠かせないのが
**でんぷん(=炭水化物)**です。
✔ でんぷんの役割
- 熱と圧力で糊状になり“つなぎ(接着剤)”になる
- 粘度を出して粒の形を安定させる
- 生肉中心では固まらずキブルにならない
- 保存性・見た目・硬さが安定する
つまり、
技術的にドライフードは炭水化物なしでは成形できません。
「無炭水化物のキブル」がほぼ存在しない理由がこれです。
2|理由②:原価が安く、価格を抑えるために必要だから
もう1つの大きな理由が「経済性」です。
✔ 一般的に安い原材料
- とうもろこし
- 小麦
- 米粉
- コーングルテンミール
- ポテト/タピオカ
これらの炭水化物原料は、
肉や魚の1/3〜1/10の価格で仕入れられるため、
企業としてはどうしても使いたくなります。
もし肉比率を高めると…
- 原価が上がる
- 小売価格が2〜3倍になる
- 大量流通に乗りにくい
- 消費者の購買層が狭くなる
つまり、
「価格を抑えつつ大量生産するには炭水化物が不可欠」
という市場構造があるのです。
3|理由③:賞味期限を延ばし、大量流通に耐えるため
ドライフードが
常温で1年以上も保存できる理由は、実は炭水化物にあります。
炭水化物は
- 酸化しにくい
- 腐敗しにくい
- 水分が少なく安定
という性質を持つため、
“保存の柱”として非常に優秀です。
反対に、
動物性脂肪や生肉は酸化が早く品質劣化が起きやすいため、
割合を増やすほど賞味期限が短くなります。
4|理由④:ペットフード会社側の事情(大量生産・在庫管理)
大手企業ほど
- 数百トン単位で製造
- 世界中へ輸出
- 倉庫での長期在庫
- 価格の安定供給
が求められます。
炭水化物は
収穫量が安定し、価格変動も小さく、保管コストも低いため、
企業にとって扱いやすい原材料です。
逆に、生肉中心フードは
- 天然素材で価格変動が大きい
- 冷凍保管が必要
- 生産ロスが増えやすい
という理由で、大量生産には不向きです。
5|理由⑤:嗜好性を“手軽に”上げられる(血糖の急上昇)
炭水化物、とくに精製された
米粉・コーンスターチ・小麦 は、
血糖値を急上昇させやすく、
犬にとって「美味しい」と感じやすい特徴があります。
つまり、
味付けをせずとも食いつきが良くなるのです。
本来の食性とは逆であっても、
「食べる=良いフード」と誤解されやすく、
企業としてもメリットがあります。
6|理由⑥:人間の食品ほど規制が厳しくないため
ペットフードは
人間の食品に比べて明らかに規制が緩く、
- 原材料の比率
- 成分の上限・下限
- 産地・品質表示の厳しさ
などの基準が低めです。
そのため「安価な炭水化物を主原料にすること」が容易で、
企業にとってコスト圧縮の手段になりやすいのです。
まとめ:炭水化物が多いのは“必要だから”でなく“都合が良いから”
炭水化物が多いのは、
犬の健康上の理由ではなく…
**✔ 製造の都合(固めるため)
✔ 経済の都合(原価が安い)
✔ 流通の都合(賞味期限が長い)
✔ 企業側の都合(大量生産しやすい)
✔ 嗜好性が上がり販売しやすい**
犬の体に必要だから多いのではなく、
企業と大量流通の仕組みにとって都合が良いため
炭水化物が主原料になってしまうのです。
◆次回予告:良いフードはどう作られているのか?(⑤につづく)
ここまで、
「なぜ炭水化物が多く使われるのか?」
について解説してきました。
では逆に――
“良いフード”は、どのような考え方で、どのような工程を経て作られているのでしょうか?
次回⑤では、
- 良質な原材料の選び方
- 新鮮な肉・魚を主原料にできる理由
- 栄養を壊さない加工方法
- “高たんぱく・低炭水化物”を実現する技術
- 粒にしないフード(フリーズドライ・エアドライ)の特性
- 価格が高くなる本当の理由
- 大量生産フードとの決定的な違い
など、良いフードができるまでの裏側をわかりやすく解説します。
あなたの愛犬にとって
「何を基準に選ぶべきか」が、よりクリアになりますので、ぜひ次回もご覧ください。
臨床獣医師として
“本当に安心しておすすめできるフードだけ”を厳選しました。
👉 BASE|犬用フードカテゴリ
https://petsalonnoel.base.shop/categories/7021944
(アカナ・オリジンを中心に、全年齢対応・低GI・高タンパクのフードを厳選しています)
◆筆者プロフィール
亀森 直生(かめもり なお)
獣医学博士・臨床獣医師/動物病院院長
臨床獣医師として20年以上の臨床経験を持ち、
これまでに診てきた犬・猫の症例は延べ数万件以上。
動物病院の院長として診療にあたりながら、
消化器疾患・皮膚疾患・栄養学を中心に
“フードで健康をつくる” という視点での診療を続けている。
現在は、保護猫カフェ・ペットサロン・オンラインショップの運営も行い、
良質なペットフードの啓蒙活動や商品監修 にも力を入れている。