前回の記事では、「犬にとって最適なフードを選ぶための基本的な考え方」について解説しました。
今回は一歩踏み込み、なぜスーパーや量販店でよく見かける一般的な市販フードでは、愛犬の健康に十分とは言えないのか?
その理由を、栄養学・製造工程・原材料の観点から解説します。
1. 市販フードの“主原料”が犬の体に合っていないことが多い
● 本来の犬の消化構造とミスマッチ
犬は雑食寄りとはいえ、肉類中心の食性に適応した動物です。
しかし、よく見る市販フードでは
- トウモロコシ
- 小麦
- 米
- 植物性たんぱく質
などの穀物が主原料になっていることが多く、
たんぱく質の質や消化吸収効率が低くなりやすいのが現実です。
● 炭水化物が多すぎる問題
市販フードの多くは、製造しやすさ・コスト面から炭水化物の比率が高め。
しかし犬は炭水化物の大量摂取が得意ではなく、
- 肥満
- 血糖値の急上昇
- インスリン過剰分泌
- 皮膚トラブル
などにつながることがあります。
2. 原材料の質に大きな差がある
● “ミール”や副産物が多用されがち
一般的なフードの多くには、
肉ではなく**“ミートミール”“副産物ミール”**が使われることがあります。
・どの部位を使っているか不透明
・栄養価が低い場合もある
・酸化が進みやすい
など、品質にばらつきが生じやすいのが弱点です。
● 鮮度の低い脂質は酸化リスクが高い
脂質は鮮度が命。
低価格帯ほど、酸化しやすい油脂が使われる傾向があります。
酸化した油脂は、
- 胃腸トラブル
- 皮膚の状態悪化
- 慢性炎症のリスク増
へつながる可能性があります。
3. 添加物が多くなる傾向がある
● 見た目を良くするための“着色料”
犬は色で食いつきを判断しません。
それでも市販フードには
- 着色料
- 合成香料
- 保存料
などが使われることがあります。
特に着色は飼い主向けの演出ですが、犬の健康に必要なものではありません。
● 香料頼りの嗜好増強
原材料の品質が低いと、嗜好性を上げるために香料に頼りがちです。
香りでごまかせても、栄養バランスが良いとは限りません。
4. たんぱく質量が「足りない」または「質が低い」問題
犬の健康維持に必須の動物性たんぱく質。
しかし市販フードでは、植物性たんぱく質でかさ増しされることも多く、
- 消化効率が低い
- 必須アミノ酸のバランスが悪い
- シニア期の筋量維持に不利
という欠点が出てきます。
特にシニア犬では高品質なたんぱく質が健康寿命に直結するため、重要なポイントです。
5. 製造工程の違いも大きい
● 高温加熱による栄養損失
一般的な大量生産では、
- 高温・高圧の押し出し製法(エクストルーダー)
が使われます。
この工程では、熱に弱い
- ビタミン類
- アミノ酸
- オメガ3脂肪酸
が損失しやすく、後から合成ビタミンで調整されます。
● “食べやすさ”より“コスト効率”優先の設計
コスト重視では、どうしても
- 炭水化物で固める
- 保存性を上げる
- 低価格原料を使う
といった方向に向かってしまいます。
6. ライフステージごとの最適化が不十分な場合も
犬の年齢はライフステージで栄養要求量が変わります。
- 子犬:高たんぱく・高脂肪
- 成犬:バランス重視
- シニア:高品質たんぱく質を維持しつつ低GI
しかし、低価格帯の市販フードは「全年齢対応」や「ざっくり設計」が多く、
科学的な栄養最適化が十分でないこともあります。
まとめ|“市販でよく見るフード”が悪いわけではないが、愛犬に最適とは限らない
市販フードのすべてが悪いわけではありません。
ただ、
- 原材料の透明性
- たんぱく質の質と量
- 炭水化物比率
- 脂質の鮮度
- ライフステージ設計
など、大切なポイントが十分でない製品も多いのが現実です。
愛犬の健康寿命を考えるなら、
「“安い・よく見る・手軽”だから選ぶ」のではなく、
“本当に犬の体に合うフードは何か?”を基準に選ぶことが大切です。
次回③では、
健康寿命を伸ばす「良いフードの具体的な見極め方」
をさらに深掘りして解説します。
筆者プロフィール
名前:亀森 直
役職:ノエルペットクリニック院長
経歴:山口大学大学院連合獣医学研究科卒業(獣医学博士)、勤務医を経てノエルペットクリニックを開業、通算20年以上にわたり小動物臨床に従事。
